畜産農家
出荷間近の肉牛に飼料を優先して与え、その分、繁殖用牛の餌を通常の2割まで減らした。
牛舎には、やせ細って背骨の浮き出た牛が並ぶ。代表の関村清幸さん(58)は「早産した牛がいた。餌が少ないためのストレスだったのだろうか。腹いっぱい食べさせられないのは、畜産農家にとって苦痛だ」と悔やむ。
4月に入り、必要量は確保されつつあるが、関村さんは「苦しんでいる畜産農家は多い。国は支援を考えてほしい」と訴える。
宮城県は、家畜の死亡など震災による畜産被害を約22億円と試算する。飼料の供給停滞による間接的な影響は、含まれていない。
東北農政局は「民民契約の問題で、国に補償義務は生じない」との立場を示す。県も「今後の国との交渉課題」と言葉少なだ。(田村賢心)
◎東北の一大供給地/石巻工業港、津波で壊滅/再開の見通し立たず
飼料や肥料のメーカー13社が集積する石巻工業港北東部の食品飼料団地。襲った津波は高さ約10メートルを超えた。
岸壁に貯蔵タンクが転がり、倉庫の外壁は、めくれ上がって鉄骨がむき出しになっている。がれきや大破した大型トラックが車道の半分を埋め、クレーンが横たわる。周囲には腐敗した泥と飼料の臭いが漂う。
農協系の飼料会社「北日本くみあい飼料」(仙台市宮城野区)の石巻工場は、震災から3週間以上が経過しても電気、水道、通信が止まったままだ。
震災前は1日約2000トンの飼料を東北6県に供給していた。今は手作業で100トンを出荷するのが精いっぱい。5月末をめどに、全国の農協系飼料会社からの供給で需要をカバーする計画だが、石巻工場は復旧の見通しも立たない。
業務部長の瀬野則幸さん(57)は「一日でも早く工場を稼働させたいが、電気も水も来ないままでは、どうにもできない」と嘆く。
港湾施設の被害も深刻だ。石巻工業港の岸壁は60~100センチ沈降し、高潮や大潮で海水が乗り上げる恐れもある。一般船舶の接岸は1日から可能になったが、大型船からの荷揚げは困難な状況が続く。
岸壁は至る所に亀裂が走り、波打っているため大型車両の乗り入れが難しい。貯木場には船舶が座礁し、荷揚げ用の大型機材も横倒しになっている。
石巻工業港で飼料の荷揚げや倉庫管理を手掛ける南光運輸も、重機や倉庫の大半が壊れた。業務課長の阿部直之さん(52)は言う。
「(1978年の)宮城県沖地震でも港の復旧に5年以上かかった。今回の地震はその比ではない」
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2011年11月28日