ブランド力の低下
東日本大震災のダメージは、内陸部の畜産農家にも広がっている。石巻工業港に林立する飼料工場が津波で軒並み壊滅。東北で使われる飼料の3割超を生産していた一大供給地が崩壊したからだ。飼料不足に陥った肥育農家は肉質への影響、築いてきたブランド力の低下を懸念し、支援を訴える。
宮城県栗原市若柳で、銘柄牛の「若柳牛」を肥育する菅原文男さん(56)が、約40頭に餌を与えていた。トウモロコシ、大麦、ぬか…。良質の肉をつくるため、若柳地区の肥育農家が研究を重ね、開発した特別な飼料だ。
「この餌も残り少ない。再び手に入れるまでには、かなりの日数がかかるだろう」。菅原さんの表情はさえない。
長年、石巻市の飼料工場に配合を依頼してきた。その飼料の入荷は震災後、途絶えた。飼料の入荷に関する情報も入らず「肥育農家は不安で仕方ない」と言う。
震災直後は、わらを多めに交ぜ、残っていた飼料を少しずつ与えるほかなかった。1回の量も通常の6割に抑えた。牛は餌箱をなめ尽くすように食べた。
3月下旬にようやく東北以外で生産された飼料が流通し始め、菅原さんの牛舎にも届いた。牛への給餌量自体は震災前の9割にまで回復。取りあえずは一安心だが、不安が完全に解消されたわけではない。
配合比率が以前と異なる飼料でかさを増しているため「肉質にも影響が出るだろう」と菅原さんは懸念する。飼料の不足や違いによる家畜の品質低下は、簡単には回復できない。「肉質は牛の様子を見ても確かめられない。分かるのは枝肉になった時だ」
菅原さんに届けられた飼料は全て、成長した肥育牛用だった。子牛用のストックが少ないため、やむを得ず子牛にも与えている。
「子牛に肥育用を与えるとロースが小さくなったり、病気がちになったりする」と菅原さん。「まずは牛の命をつなぐことが大事。ぜいたくは言えない」と自らを納得させる。
漢方草を食べさせて飼育した「新生漢方牛」を出荷している栗原市築館の関村畜産も、綱渡りのやり繰りを強いられた。
▼参照サイト▼
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2011年11月28日